ザ・ビートルズ『ヘルプ!』(1965)【最強ロック名盤500】#93

HELP!-STEREO REMASTERE

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#93
The Beatles
“Help!” (1965)

これを書く前にユニバーサル・ミュージックの公式サイトを覗いて初めて知ったのだけれども、現在はこのアルバムの邦題は原題そのままの『ヘルプ!』になっているようだ。

本作はビートルズの2作目の映画『HELP! 4人はアイドル』のサントラとしてリリースされたので、、長いあいだ邦題は『4人はアイドル』だった。わたしが十代の頃に買ったCDはもちろん『4人はアイドル』だったが、もう何十年も聴いていない。

どんな曲が入っていたかも忘れかけていたが、まあ所詮くだらないアイドル映画のサントラなのできっとろくでもないものだろう、まあできれば駄作であってくれ、と思った。
なにしろわたしのブログの読者には昔からわたしと同じストーンズ強火ファンが多いので、あんまりビートルズばかり選んでいると読者離れを引き起こす恐れがあるからだ。

そう思いながら何十年ぶりかに聴いたが、腹立たしいことに、これもまたどえらく充実した内容の傑作であり、またしても選ばざるを得なくなってしまった。

デビュー以来、半年に1枚というハイペースでリリースしてきた5枚目のアルバムなので、もうそろそろ出涸らしみたいになってるかと思いきや、逆にどんどん進化し、音楽の幅が広がり、ソングライティングのクオリティも上がる一方だ。今更だが、あらためてヤツらが化け物のように思えてきた。

本作は1965年8月にリリースされたビートルズの5枚目のアルバムである。オリジナルLPのA面が映画で使われた楽曲で、B面は映画に関係ない新曲だ。カッコ内はカバー元のアーティストだ。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ヘルプ!
2 ザ・ナイト・ビフォア
3 悲しみはぶっとばせ
4 アイ・ニード・ユー
5 アナザー・ガール
6 恋のアドバイス
7 涙の乗車券

SIDE B

1 アクト・ナチュラリー(バック・オーウェンス)
2 イッツ・オンリー・ラヴ
3 ユー・ライク・ミー・トゥー・マッチ
4 テル・ミー・ホワット・ユー・シー
5 夢の人
6 イエスタデイ
7 ディジー・ミス・リジー(ラリー・ウィリアムズ)

私見ではあるが、ここまでのビートルズのアルバムではダントツで名曲揃いの名盤である。

A1「ヘルプ!」とA7「涙の乗車券」は全英・全米ともにシングルカットされ、どちらもチャート1位を獲得している。さらに、イギリスではシングルカットされなかったが、「イエスタデイ」は全米1位をはじめ世界中のチャートの上位を獲得し、初期ビートルズで最も知られた曲のひとつとなった。

上に挙げたような有名曲以外では、ポールのA2「ザ・ナイト・ビフォア」、ジョンがディランを意識したらしいA3「悲しみをぶっとばせ」、リンゴがヴォーカルをとったカバーのB1「アクト・ナチュラリー」、ジョンのB2「イッツ・オンリー・ラヴ」、A6「恋のアドバイス」、ポールの「夢の人」などもいい。

ロックの最先端を行くミュージシャンであると同時に人気絶頂のスーパーアイドルでもあった4人は、「なんか思ってたのと違うんだよなあ。こんなはずじゃなかった」と、自分たちの置かれた状況に違和感を感じていたのだろうと思う。

「助けて! 誰でもいいから!」と歌うジョンの心はもしかするとジュクジュクに病んでいたのかもしれない。
病的な歌詞に、切実なトーンのメロディー、そこにポップなコーラスと軽快なビートに乗せた、屈折しまくりの変態チックな曲だと思う。

そしてさらにそれを『HELP! 4人はアイドル』という本気なのか皮肉なのかよくわからないタイトルの、ドタバタコメディ映画の主題歌にするという、もうビートルズはいったいなにをしたいのか、わけがわからない。もちろん、いちばんわけがわからなかったのは本人たちなのだろうけど。

このMVを見ても、相変らずアイドルチックな演出で歌っているけれど、表情はすっかり素に戻っているのがわかる。特にリンゴはもう完全オフになっていて笑える。

↓ 全英1位、全米1位となった名曲「涙の乗車券」。

(Goro)

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