スウェード/トラッシュ(1996)

カミング・アップ(コンプリート・エディション)(DVD付)

【ブリット・ポップの快楽】
Suede – Trash

スウェードは1992年にデビューした。

あれは衝撃的だったな。

その当時のイギリスのバンドは、マッドチェスターみたいなダンス・ロック系のバンドか、シューゲイザーみたいな轟音ギター・バンドが多かったのだけど、彼らは70年代のグラム・ロックを彷彿とさせながら、楽曲の完成度がめちゃ高い王道のロックだった。そのうえルックスまで完璧だった。

案の定、彼らは一気に売れた。
そりゃそうだろう、あらゆる意味で彼らよりカッコいいバンドなんてその当時のイギリスに存在しなかったのだ。

王道ブリティッシュ・ロックへの回帰という意味で、実は彼らこそが90年代に最初に出現したブリット・ポップだったのだ。
しかし当時はまだ後に続く者が出てこなかった。彼らはちょっと、早すぎたのだ。

この「トラッシュ」は、そのブリット・ポップ・ブームの真っただ中の1996年にリリースされた3rdアルバム『カミング・アップ(Coming Up)』からのシングルで、全英3位の大ヒットとなった。

1度聴いたら忘れられない、1日中口づさんでしまうようなキャッチーなメロディはさすがスウェードだ。彼らはデビューしたときからずっとそんな曲を書いていた。

存在感の大きかったギターのバーナード・バトラーが脱退した後は、スウェードはもう終わりだと見られていた(わたしもそう思った)けれども、この3rdアルバムはさらにポップなアプローチで全英1位と、起死回生の大ヒットとなり、ブリット・ポップのおチビちゃんたちとは格の違いを見せつけたのだった。

PVのブレット・アンダーソンはまるで70年代のデヴィッド・ボウイのように、眼光鋭く、ひとり我が道を往く孤高の男の顔つきだ。

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