映画に”オチ”なんていらない!1999【死ぬまでにもう一度見たい映画を考える】その19

ライフ・イズ・ビューティフル [DVD]

多くの人が1999年に地球が滅びると思い込んでいた。ノストラダムスという人がそう予言したからだ。加えて、コンピューターの2000年問題というのもあった。たとえ1999年を無事切り抜けたとしても、2000年になった瞬間、世界中のコンピューターがダウンしたり誤動作したりで世の中がてんやわんやになって世界が滅亡するのだとまことしやかに囁かれたものだ。そんな不安を煽ることで信者獲得を狙う新興宗教もあったが、どれもこれも杞憂に終わった。恐怖に怯えた人々はホッと胸を撫で下ろし、すべてが御破算になるのを期待していた人々は、まだまだ人生の苦しみが続くことに嘆息したことだろう。

わたしは予言も占いも1ミリも信じたことはないので、よかったとも残念だとも思わなかった。レンタルビデオ店の店長をしながら本部でビデオのバイヤーの仕事に関わることもできるようになり、俄然面白くなってきた仕事に熱中していた。もしあそこで地球が滅亡してわたしの人生が終わっていたら、まるっきりクソみたいな人生だったと思う。

この年に日本で公開された作品の中で最も印象に残っているもののひとつが、ロベルト・ベニーニが監督・主演した『ライフ・イズ・ビューティフル』(’97)だ。

それまで何度も映画や文学の題材にされてきたナチスによるホロコーストを、こんなふうに描いた作品は初めて観た。きっと前代未聞だったに違いない。笑いと感動と衝撃の傑作だった。今、ネットで調べて今一度あらすじを読み返してみたけれども、1回しか観ていないのに映像がしっかり蘇ってくるし、ついでに涙まで込み上げてきた。あらすじを読んだだけなのに。胸が苦しくなるような映画なのでもう一度見るのはためらいもするが、それでもいつかはもう一度見てみたい。

バッファロー'66 [DVD]

役者が監督・主演を兼ねた作品といえばもうひとつ、ヴィンセント・ギャロによる『バッファロー’66』(’98)も楽しい映画だった。固定カメラによる撮影はなんと小津安二郎に影響を受けたらしい。キング・クリムゾンやイエスといったサウンドトラックがまた作品の空気を独特のものにしていて面白かった。これもいつかもう一度見てみたい映画だ。

映画「シックス・センス」(1999)を再見。2度目で様々な伏線に唸る。 - fpdの映画スクラップ貼

M・ナイト・シャマラン監督の『シックス・センス』(’99)も大きな話題を呼んだ映画だ。この映画の後半で明らかにされる仕掛けに当時は誰もが驚かされたものだった。仕掛け以前に映画として素晴らしい出来だったけれども。

この映画以降、こんなふうに観客を騙し、驚かせる仕掛けを忍ばせた作品が流行したものだ。そのせいかどうかはわからないが、映画の感想で「オチがつまらなかった」などというアホみたいなことを言う人が増えた気がする。実際わたしの同僚たちにもいたし、ネットの書き込みでもよく見かける。映画に「オチ」を期待するなど考えたこともなかった。落語じゃあるまいし。

ファイト・クラブ [AmazonDVDコレクション]

デヴィッド・フィンチャー監督の『ファイト・クラブ』(’99)もそんな「仕掛け」のある作品のひとつだったが、見応えはあったもののどんな展開だったか忘れてしまったので、これももう一度見てみたい作品だ。

マトリックス(吹替版)

この年一番のヒットとなったのはウォシャウスキー兄弟監督の『マトリックス』(’99)だ。アクションの技術や視覚効果でエポック・メイキングな作品となったし、わたしも楽しんだが、実は2作目以降を観ていない。2作目が公開された頃には設定やストーリーや忘れてしまっていたので見る気がしなかったのだ。いつかぶっ続けでシリーズをすべて観てみよう。

シン・レッド・ライン [AmazonDVDコレクション]

他にはテレンス・マリック監督の20年ぶりの作品『シン・レッド・ライン』(’98)はガダルカナル島で戦った米陸軍歩兵師団の若者たちを描いた作品だ。ストーリーはあんまり覚えていないけれども、映像の美しさが鮮烈だったと言うことを記憶している。

メリーに首ったけ の映画情報 - Yahoo!映画

コメディ映画をあまり観ないわたしだが、キャメロン・ディアスの出世作となった『メリーに首ったけ』(’98)と『オースティン・パワーズ:デラックス』(’99)は楽しんだ。どちらも下ネタ満載のお下劣コメディだが、それなのにどこかクールでビューティフルでとことんバカなのがいい。皆月 デラックス版 : 奥田瑛二 / 望月六郎 | HMV&BOOKS online - PIBD-1036

邦画はあまりこれと言って印象に残っているものが少ないのだけれども、望月六郎監督でわたしの好きな奥田瑛二主演の『皆月』(’99)はやっぱり好きな作品だった。

(Goro)