名盤100選 61 エディ・コクラン『ベスト・オブ・エディ・コクラン』

エディ・コクラン・ベスト

エディ・コクランなんてもう50年も前の音楽だ。
50年前の音楽なんて、今の若い人たちが聴いたらどんなふうに聴こえるのだろう。
われわれが聴くのとは全然違って聴こえるのだろうか。われわれはこの音楽にリアリティを感じるけど、若者たちにはもはや感じられないのだろうか。
わたしにとって1930年代のSPレコード時代のブルースがそうであるように、あまりに原始的すぎてその魅力がよくわからない「むかしの音楽」にやはり聴こえるのだろうか。

それにしても良い音で鳴っている。
モノラルだけど、音を手でさわれるような気さえするほど、楽器の音がくっきりとして、楽器の音らしく聴こえる。みずみずしく、立体的な音だ。シンプルで、大胆で、まったく新しい音楽であった当時の鮮度は、いまのわたしでも感じることができる。

50年前にこの音楽が、若者たちを熱狂させた。
それはもう大変な衝撃で、若者たちは大変に興奮をして、大変に幸福を感じたに違いない。
なんでもありの今の時代ではまず味わうことのできない、「世界が変わるような」経験だったに違いない。

今年は2010年になったので、2000年から2009年までの「00年代」が終わったということである。
80年代の名盤、90年代の名盤があるように、00年代の名盤という言い方もされるのだろう。
でもこれ、なんて呼んだらいいのだろう? エイティーズ、ナインティーズの次はどう呼ぶ?
面倒なのでこのブログでは「ゼロ年代」と呼ぶことにするけど。

音楽雑誌では早速、ゼロ年代の名盤選びなどの企画も見かける。
アメリカのRolling Stone誌では、1位がレディオヘッド(キッドA)、2位がストロークス(イズ・ディス・イット)、3位がウィルコ(ヤンキー・ホテル・フォックストロット)となっている。
イギリスのNME誌はストロークス、リバティーンズ、プライマル・スクリーム(エクスターミネーター)である。
日本のCDジャーナルだと、レディオヘッド(キッドA)、ホワイト・ストライプス、アーケイドファイアがベスト3に選ばれている。

それにしても、だ。
この10年間を代表するロック・アルバムがこんなにややこしくて殺伐とした音楽ばかりだなんて、なんだか暗澹とした気持ちになる。
何十年後かに、この2000年代を舞台にした映画が作られたとして、レディオヘッドやストロークスやアーケイドファイアがサウンドトラックとして使われるなら、それは決して幸福な印象の映画にはならないだろう。主人公がずっと部屋で膝を抱えてうずくまっているだけの映画にもなりすねない。
いったいいつからロックは、「楽しい」という要素がまったく無いものでも「名盤」と呼ばれるようになったのだろう?

エディ・コクランの時代に若者たちをごくシンプルに熱狂させた「ロックンロール」は、その後進化に進化を重ねたあげく、今や常人には理解しがたい、仰々しくも難解な「アート」と化してしまったのだろうか。
まるで常人には落書きやガラクタのようにしか見えないのに高額な値で取引される「現代美術」のようなものに成り果ててしまったのだろうか。
もちろんそんな音楽ばかりではないのはわかっているが、ジャーナリズムがこぞってこういう評価の仕方をするのは、それはロックにとっては不幸なことではないかと思う。

わたしは職業柄、同世代の人よりはリアルタイムのロックも聴いているほうだ。
でも曲単位では良い曲だなあと思うものも時々はあるものの、アルバムとして楽しめるほどのものにはほとんど出会わない。
まああたりまえだ。
自分より20歳も年下の連中がやってるロックに共感するのはなかなか困難なことである。
リアルタイムのロックの評価はやはり、リアルタイムの若者たちがするのが正しい。2000年以降のことは彼らにバトンタッチだ。
われわれは自分と同世代のアーティストに共感すればいいし、自分より上の世代のアーティストたちから学べばいい。

われわれはエディ・コクランの音楽の素晴らしさがまだリアルにわかる世代だ。それを誇りにして、いつまでも伝えていくのがわれわれの役目であり、先人たちへの恩返しなのではないかと思う。
彼らがこの素晴らしい音楽を創造してくれたことによって、現在に至るまで、若者たちは不安だらけの人生においても、ロックミュージックによって、生きていくための勇気や楽しみを見出し、救われているのだ。
われわれの若い頃と同じように。

コメント

  1. ゴロー より:

    通りすがりならしょうがないけど
    このブログを通読してる人はわかってると思うけど、わたしはそもそも、ややこしくて殺伐とした音楽を好んで聴き、それをこのブログで「名盤」として挙げているものです。

    レディオヘッドを最も好きなバンドのひとつに挙げて何度も絶賛していますし、このベスト100にもすでに選んでいます。アーケイドファイアもストロークスも好感をもって、聴いています

    その立場から、50年前のエディ・コクランの音楽のシンプルな素晴らしさについて、この回では「自戒をこめて」書いているわけです。

    このことを頭に入れたうえで改めて読み直してみてください。

    どっちにしろ、記事でも書いてるように、2000年代以降の名盤は、われわれの世代ではなく、あなたがたの世代がブログにでも書いてくれたらいいんです。

  2. optimistic より:

    通りすがりです
    「楽しい」と相反する言葉は「苦しい」です。
    つまり「楽しい」と「ややこしい」・「殺伐」は同居し得ます。

    このことを頭に入れたうえで改めてゼロ年代の名盤を聴いてみてください。

    きっとその映画の主人公は立ちあがり、幸福を求め、部屋の扉を開くことでしょう。

  3. ゴロー より:

    ああ、あれね
    わかるけど、でもわたしは最近は、そっちのほうはそっちのほうで、共感というのではないけど、楽しめるようになりましたね。鑑賞して楽しむ、ということはできますね。

    年下のはムリ、っていう意味では、わたしは小説なんかも絶対ムリですね。まず読まないし、この先も死ぬまで読めなくてもまったく困りません。
    映画でも、どちらかといえば自分と同じ世代かそれ以上の人が主人公のほうが感情移入しやすい。

    でもマンガは大丈夫だな。
    あとお笑いも大丈夫ですね。どちらもむしろ若い方に興味を惹かれる。
    なんでだろうな。

  4. フェイク・アニ より:

    世代論
    『自分より年下の連中がやってるロックなんて聴けるか!』

    その通り。

    ロックとは価値観であり生き方であるからして、明らかに自分より年下の坊主達が、いかに革新的な音楽性や崇高な哲学を歌い上げたとしても「おっ、やるな」とは思っても、そんなものに共感出来るわけが無いのだ。

    俺の方がオマエ等より10年分くらいはエライ目に逢って生きてんだコゾーコノヤロってな事である。

    これはもうショウガ無いのである。

    ビートルズ、ストーンズが何10年経っても売れ続ける理由の一つもソレだが、この話はまた今度。

    実は僕、『■■の歌うロックに共感なんか出来すか!』ってのがもう一つ有るんだけど、モノスゴク誤解(誤解でもないんだけど)を招きそうなので、その話はゴローちゃんとまた夜中にコッソリと。

  5. まーこ より:

    必要な音楽
    エディ・コクランは新しぃジャンルを作った異端児的な存在だって聞いた事があるけどロカビリーって言われるよぅになったのはエディ・コクランなのか?
    あれっ?プレスリーが先か!?
    私はロカビリーにつぃてはストレイ・キャッツの他は、全く知らなぃのでいい加減な事を言ってしまぅけれども・・(~_~)

    エディ・コクランと言えば、雄介氏が前に演っていたバンド”ムーン・シャイナーズ”で初めて『カモン・エヴリバディ』を聴いて、あまりのカッコ良さに「あの曲って誰の曲?」と、聞いた事がある。

    店に行ったらこのベスト盤があったのに。。(笑)
    ご機嫌な音楽は大好きだから、それから一っ時かけていた。

    ところで、私も昨日本屋で『00年代』といぅ特集本をを見つけて驚いてた所デス!
    急がしかった&全く興味の無ぃ時代だったので見なかったが・・
    ゴローさんのコメントを見ると思った通りだった。(^_^;)
    イィものが出尽くした後には、破壊か大げさな着色しか残っていなぃのか?
    夢や希望が伝わって来なぃのは、物に溢れた時代の生んだ産物か。。

    10代、20代はパワーがあるから聴き方が違うだろーけど、いずれ年を重ねたら気付くんだろぅ。。。
    余分なものは必要無くなるって。
    ・・・なんてネ!
    私も要らなぃって言われなぃよーに頑張ろっ☆(笑)

    20年後に00年代で残ってる曲を逆に聴いてみたぃ。

    今日、店に行ったらエディ・コクランを聴きなおしてみます♪