“Machine Head” (1972)
わたしはいつかこのブログで〈わたしのロック名盤500〉という連載をやりたいと思っているのだけれども、しかし現時点ではもちろん時期尚早である。
わたしはいかにも長年ロックを聴いてきました風なことを書いてはいるものの、実際は狭く深く好みのジャンルばかりを聴いていて、しかもそれは大抵マイナーなものが多く、いわゆる「ロックの名盤」と世間で評価されているものにも未聴のものが山ほどあるのだ。
たとえばわたしは若い頃からハード・ロックは食わず嫌いだし、80年代のニューウェイヴやシンセロックは避けて通ってきたし、プログレやヘヴィメタなどとは決して目を合わせないように生きてきたりと、食わず嫌いの多い偏食的な聴き方をしていて、かなり有名な名盤でもまあまあ聴いていなかったりする。
なので、この辺でちょっと食わず嫌いの克服を試みたいというのがこの新シリーズ【食わず嫌いロック克服記】である。
わたしにとって新たな世界の探究となる楽しみと同時に、将来選ぶはずの〈わたしのロック名盤500〉のための選抜大会のようなものにもなるだろう。
まずは世間で名盤と名高い噂を聞くものから、聴き散らかしていこうかと思う。
ということでまずは、ディープ・パープルの『マシン・ヘッド』(1972)から。
驚いたでしょう。
こんな有名なアルバムすら聴いたことがないぐらい、わたしのハード・ロック食わず嫌いは深刻なのだ。
家族が出掛けるのを待ち、家に独りになっところで、大音量で聴いてみた。
アルバムは聴いてなくても、「ハイウェイ・スター」や「スモーク・オン・ザ・ウォーター」はもちろん知っている。しかしアルバムトータルで聴いてみると、単品で聴いたのとはまた随分印象が違って聴こえるものだ。
めちゃくちゃいいじゃないか。
名盤だな。
ギターもベースもいいな。リッチー・ブラックモアな。名前はよく知ってる。顔は知らないけど。ロジャー・グローヴァーは初めて聞く名前だ。
変態的なオルガンがまたサウンドを独特なものにしている。
聴けるな、ハード・ロック。
早速ちょっと好きになったな、ハード・ロック。
やっぱり食わず嫌いだったんだな。
ていうか、年齢を重ねた今だから聴けるということもあるのかもしれない。
若い頃のわたしはパンクが好きで、少し上の世代の先輩たちが聴いていたハード・ロックに対して「あんなダサいもの聴けるか!」なんて大して知らないのに鼻息だけは荒くしていたものだ。
しかしその後わたしはなかなかのダサい底辺人生を送り、鼻っ柱を折られ、足をすくわれ、恥辱や屈辱や汚辱に慣れていきながらすっかりダサいジジイに変わり果てたためか、価値基準も相対的に変わり、むしろダサいものや時代遅れのものほど共感が増し、カッコよく思えるようになったのかもしれない。
ロックは人生を映す鏡だな。
2023年に、時代遅れの化石のようなハード・ロックが、かくも生き生きとカッコよく聴こえる。
(Goro)
コメント
この企画もまた面白そうで!
凄く楽しみにしてます!
ありがとうございます!
普段「いったい誰がこんなものを読むのか」と心の片隅で不安になりながら書いているので、そういう応援がいちばん嬉しいです。
よし、頑張って書くぞ! という気持ちが百倍ぐらいに膨らみました。