“Black Rose (A Rock Legend)” (1979)
本国アイルランドでは国民的人気、というよりも英雄的人気と言ったほうが相応しいらしい、シン・リジィが1979年に発表した9枚目のアルバム『ブラック・ローズ』を聴いてみた。
シン・リジィも昔からハード・ロックに分類されていたので、わたしは長いこと食わず嫌いだったが、数年前に彼らの代表作として知られる『脱獄』(1976) を聴いてみて、確かにツイン・リードギターなどハード・ロック的な要素もあるにはあるが、いわゆるハード・ロックというのとはちょっと違うなあ、と思ったものだった。ハード・ロック風のパブ・ロック、なんて印象も抱いた。もちろん、褒め言葉である。その、楽曲が充実したアルバム『脱獄』に非常に好感を持った。
そして本作では、フィル・ライノット(Vo&B)のソングライターとしての才能がさらに成長を見せ、楽曲は『脱獄』以上に充実している。セールスも成功を収め、全英アルバムチャートでは2位まで上昇し、キャリア最高位となった。
シン・リジィには有名ギタリストとなったゲイリー・ムーアが参加したりしなかったりを繰り返していたが、このアルバムにはがっつり参加して、ギターでの活躍はもちろん、ソングライターの面でも才能を発揮している。
シン・リジィの楽曲はポジティヴな陽性の魅力に溢れている。活力と確信を感じる。聴いていると元気をもらえる、なんて恥ずかしい言い方だが、しかしほんとうにそんな感じだ。
シングル・カットされたいかにもライノットらしい「Waiting for an Alibi」は全英9位のヒットとなった。
そしてライノットの生まれたばかりの娘のことを歌った、ムーアとの共作「Sarah」は優しさに溢れた、一度聴いたら忘れられない名曲になっている。
楽曲もいいし、演奏も良いし、アイルランド出身のロックバンドでは初めて世界的な成功を収め、国民的英雄となったのももっともな、素晴らしいバンドだと思う。
(Goro)