米国産妙ちきりんロック二題【食わず嫌いロック】#20

KIMONO MY HOUSE (RE-ISSUE

Sparks
“Kimono My House” (1974)

この妙ちきりんなジャケットはよく知られているが、実際に聴いたことがある人は少ないのではないか。わたしもジャケットだけは30年前から知っているが、聴いたのは今回が初めてだ。

スパークスは米ロサンゼルス出身の、ロン・メイル(Vo)とラッセル・メイル(Key)の兄弟二人によるバンドだ。

1971年にデビューしたが米国ではまったく売れず(だろうとも)、イギリスに活動拠点を移して制作されたのがこの3rdアルバム『キモノ・マイ・ハウス』(1974) である。全英4位、全米101位という極端な結果となっている。しかし納得である。

当時はとりあえずという感じでグラム・ロックに分類されていたらしいが、音楽的には多くのグラム・ロックのようなシンプルなロックンロールやブギーなどではまったくない。
シンセサイザーも使っているようだがしかしエレクトロ・ポップというほど電子楽器の印象は強くないし、実験的というほど訳のわからないものではない。

過激なほど癖の強いアヴァンギャルドと言えば言える作風だが、ポップセンスに優れ、どこかスタイリッシュで、キャッチーでもある。ロックらしい攻撃的なアレンジも随所に現れる。

フランク・ザッパほどふざけていないし、クイーンほど大袈裟でもなく、少なくともその二組よりはわたしは好印象を抱いた。アレンジ・センスが良いし、風変わりではあるが最後まで飽きさせずに聴かせる不思議なアルバムである。

ただし、この風変わりなジャケットから、多くの人は聴く前から過大な期待を抱くようで、期待して聴くとそれほどでもないと思う。わたしのように、てんで期待せずに聴くと案外面白いなと思うものである。

ちなみにジャケットの女子二人はたまたまロンドンで公演をしていた日本の劇団の女優がモデルを務めただけであり、レコーディングに参加しているわけではない。


SILVER APPLES [12 inch Analog]

Silver Apples
“Silver Apples” (1968)

60年代後半にNYで活動したシルヴァー・アップルズの1st『シルヴァー・アップルズ』を聴いてみる。

これは食わず嫌いというよりはただの無知でまったく彼らを知らなかっただけだが、これが結構面白い。

自作のシンセサイザーを操るシミオンと、ドラマーのダニー・テイラーの二人組による、ロック史上初のエレクトリック・ロックだ。NYの地下に、スーサイドより10年早くこんな元祖がいたとは。

これはまたスパークスとは全然違うアプローチのアヴァンギャルドだが、手作りシンセの音がアナログ感が強くて良いし、今なら打ち込みでやるようなドラムをちゃんと手足で叩いているのも微笑ましい。

実験的作品とはいえ、ふざけずに堂々と音楽をやろうとしているから、最後まで飽きずに聴ける。

これは嬉しい発見だ。

(Goro)