名盤100選 03 ザ・ローリング・ストーンズ『スティッキー・フィンガーズ』 1971

スティッキー・フィンガーズ

以前他のブログにも書き込んだことではあるが、去年わたしが新店オープン準備のために毎日通っていた尾張旭で、変わったコンビニを見つけた。
外から見る限りではなんの変哲もないサークルKだった。
店内に入ってすぐに、有線でローリング・ストーンズの「19回目の神経衰弱」が流れていることに気づいた。
ラジオ放送でも流しているのかなと思いながら目的のペットボトルのお茶を探していて驚いたのだった。

ベロマーク付きの「ローリング・ストーンズ茶」というものがあったのだ。この店のオリジナルだろうか。
あらためて店内をよく見てみれば、なんと「ストーンズチップス」「ストーンズはみがき」「ストーンズおにぎり」「ストーンズふりかけ」「みたらしストーンズ」などストーンズの名を冠した商品だらけであり、CDや関連本はもちろん、通常雑誌が置いてある窓側の雑誌用什器はストーンズのLP盤で埋め尽くされている。

なんだろうこの店はと思いながら店内をきょろきょろしていると、アンケートの記入台を見つけた。
アンケート用紙には「おまえの好きなストーンズアルバムは?」という項目があり、「おまえ」という言い方にややイラっとは来たもののわたしはアンケートに記入することにした。

いつもは『ベガーズ・バンケット』と答えるのが常だけど『ファースト』も捨てがたい。
でもいちばんストーンズのアブない雰囲気が出ている『メインストリートのならず者』もいいよなあと迷いながら、わたしは結局『スティッキー・フィンガーズ』と書いた。
このアルバムは、全曲がシングルカット出来るような粒ぞろいで、アーティスティックでありながら、商業性も兼ね備えている奇跡的なアルバムである。
ブルースとカントリーが絶妙のバランスで配合された、ストーンズ以外の何物でもない新しい音楽が創造されている。

アンケートの回答者には毎月抽選で「ロンドン風旅行」が当たるらしい。「風」というのが気になるが。
ストーンズ茶を持ってレジへ行くとまたもや驚かされた。店員がブライアン・ジョーンズにそっくりなのだ。あまりに似ているのでわたしが呆気にとられていると、店員はわたしの様子を見て苦笑した。彼にとってはいつものことなのだろう。ひょっとすると店長なのかもしれない。わたしは熱々の「ストーンズまん」をひとつ頼んだ。

変わった店があるものだ、と思いながら車で帰途に着いた。
でももう二度と行くこともないだろう。なにしろストーンズ茶はいくらなんでも味が薄すぎ、ストーンズまんときたら食えたものではなかったのだ。

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