冷戦時代に一触即発の恐怖を歌って世界的大ヒット【日本が愛した洋楽ヒット #7】 ネーナ/ロックバルーンは99 (1983)

ロックバルーンは99 (99Luftballons) - ある音楽人的日乗

ネーナ/ロックバルーンは99 (1983)
Nena – 99 Luftballons

西ドイツのバンド、ネーナの2枚目のシングルであるこの曲は、まず始めに西ドイツ国内でチャート1位を獲得する。そして偶然この曲を知った米カリフォルニアのDJが番組でかけてみると西海岸のラジオから火がつき、あれよあれよという間に全米2位まで上昇する大ヒットとなった。

日本のオリコン洋楽シングルチャートでも4週連続1位と大ヒットし、同様にスイス、オーストリア、イギリス、オランダ、スウェーデン、ポーランド、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、メキシコ、コロンビアなどでもチャート1位を獲得する、世界的なヒットとなった。ドイツ語の歌が世界的にヒットするのは極めて異例のことだった。

誰かが空に飛ばした99個の風船を、未確認飛行物体と勘違いして戦闘機が出動、それを知った敵国が侵攻と勘違いして応戦したことから戦争が始まり、勝者はなく世界は荒廃した、という当時の冷戦時代の国際情勢を風刺したような内容の歌だ。

バンドのギタリストだったカルロが、82年に西ドイツで行われたローリング・ストーンズのライヴに行き、最後に大量の風船が空に飛ばされるのを見て、これが国境を越えてソ連領内に入ったら攻撃と勘違いしないだろうかと考えたことがきっかけになって、歌詞を書いたという。曲をつけたのはキーボードのウヴェだ。

たった数発で地球をすべて破壊できると言われた核ミサイルを米ソが何千発も製造し、その保有数を競い合う(ちなみに2022年で米が5,428発、露が5,977発)という、当時中学生のわたしですら、米ソの偉い人たちは頭がおかしいのかと思ったものだが、その頭のおかしい人たちにわたしの人生も地球の運命も委ねられているのだという理不尽さに本気で絶望を感じたものだった。この曲の歌詞はそんな、あの落ち着かない、不安な時代の空気をうまく言い表しているが、曲調は派手で軽くて楽しげないかにもな80年代サウンドだ。ギャップ萌えと言えないこともない。それにしてもこんな長かったんだな、イントロ。

バンドはその後、1987年に解散。ヴォーカリストは元々彼女のあだ名だった「ネーナ」の名前でソロ・アーティストとして活動し、声優や司会者などマルチに活動をしている。

(Goro)