わたしが最初にグラム・パーソンズの名前を知ったのは、「ローリング・ストーンズに影響を与えた男」としてだった。
キース・リチャーズは自伝で彼のことをこう書いている。
1968年の夏にグラム・パーソンズに出会ったとき、俺はまだ発掘中だった音楽の鉱脈を掘り当てた。グラムとの出会いが自分の弾くもの、書くものの領域を拡げてくれたんだ。
(キース・リチャーズ自伝『ライフ』棚橋志行訳)
そしてキースはその夏の間中グラムと一緒に過ごし、彼からカントリーについて教わったり、ピアノを習ったりしたという。
「音楽の鉱脈を掘り当てた」というキースの表現が大袈裟でもなんでもないということはストーンズ・ファンなら誰もが理解できるはずだ。ストーンズはブリティッシュ・ビート・バンドから次の段階へ進もうとして壁にぶち当たり、迷走していた頃で、その壁を突破する助けとなったのがグラム・パーソンズからキースが習ったカントリー・ミュージックであり、ルーツ・ミュージックへの回帰だったのだ。
その頃グラムはザ・バーズに加入し、まるでバンドを乗っ取るようにして、カントリー・ロックという新たなスタイルを生み出した。
ストーンズ、バーズという英米の当時最も影響力の強いグループに影響を与え、行き詰りつつあったロック界全体に風穴を開けたのが彼だった。
彼は商業的な意味では成功したとは言えなかったが、しかし心から音楽を愛していた。彼の与えた最も大きな影響は、その音楽の純粋な愛し方だと言っても過言ではないとわたしは思う。彼の影響を受けたアーティストはまずその、グラムの音楽の、愛に溢れた純粋さと美しさに度肝を抜かれたに違いないのだ。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきグラム・パーソンズの至極の名曲5選です。
Blue Eyes
グラムが20歳のときに結成し、2年後の1968年にデビューしたバンド、インターナショナル・サブマリン・バンドの1stアルバム『セーフ・アット・ホーム』の冒頭を飾る曲。グラムが書き、ヴォーカルも彼自身だ。このアルバムこそが史上初のカントリー・ロック・アルバムと言えるだろう。
Hickory Wind
インターナショナル・サブマリン・バンドに在籍しながら、当時メンバーの脱退が相次いで崩壊寸前だったザ・バーズにも掛け持ちで加入した当時22歳のグラムは、言わば弱っているバーズに方向転換させて、カントリー・ロック・アルバムを作ってしまう。それが今ではカントリー・ロックの名盤としてロック史に燦然と輝く『ロデオの恋人』だ。
この曲はグラムが書き、自身がヴォーカルも取っている、美しいカントリー・ワルツだ。
Christine’s Tune
インターナショナル・サブマリン・バンドもバーズも辞めたグラムが、一緒にバーズを脱退したベーシストのクリス・ヒルマンと共に組んだバンドがフライング・ブリトウ・ブラザーズだった。1969年にリリースされた1stアルバムはカントリー・ロックの名盤として高い評価を得ている。この曲はそのオープニングを飾る曲だ。
She
フライング・ブリトウ・ブラザーズを脱退したグラムがソロ第1作として1972年にリリースしたアルバム『GP』に収録された曲。やはりグラムの真骨頂が聴けるのは2枚のソロ・アルバムだとわたしは思っている。この曲は、もはやカントリーもロックも超越したような、純粋な美しさと愛に溢れたような名曲だ。
Return of the Grievous Angel
ソロ2作目のアルバム『グリーヴァス・エンジェル(Grievous Angel)』は1973年の夏に完成していたが、グラム・パーソンズはその直後の9月19日にモルヒネとテキーラの過剰摂取によって死去した。このアルバムもまた1stに引けを取らない名盤だ。
この曲はアルバムの冒頭を飾る曲で、一緒に歌っているのは当時のグラムの恋人でもあったエミルー・ハリスだ。泣ける。
入門用にグラム・パーソンズのアルバムを最初に聴くなら、最後のアルバム『グリーヴァス・エンジェル』をお薦めしたい。もちろん『GP』でもいいけど。どちらも名盤だ。
選んだ5曲を続けて聴けるYouTubeプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪プレイリスト⇒はじめてのグラム・パーソンズ【必聴名曲5選】はこちら
また、apple musicのプレイリストとしても作成済みです。
apple musicをご利用の方はこちらのリンクからプレイリストにジャンプできます。
はじめてのグラム・パーソンズ【必聴名曲5選】5 GRAM PARSONS Songs to Listen to First (goromusic.com)
ぜひお楽しみください。
(by goro)
コメント
In my hours of darknessも名曲です
たしかに!
今回は各時期から1曲ずつ選んだので漏れてしまいましたが、単純にベスト5を挙げたら入ってくる名曲でした。
コメントありがとうございます!