はじめてのグラム・ロック【必聴10組10曲】10 Glam-Rock Songs to Listen to First

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グラム・ロックとは「グラマラスなロック」という意味で、メイクをしたりきらびやかな衣装を着たりという外見的な共通性を指すイメージがあるが、その本質は、ポップでキャッチーな英国王道ロックへの原点回帰だったと思う。

ビートルズ以来、良くも悪くもアートのひとつと化したロックは「進化」することが至上命題とされた。70年代に入り、アーティストもリスナーも年齢を重ね「大人」になってくると、難解なプログレッシヴ・ロックや、技術的にも難易度の高いハード・ロックなどがもてはやされた。大人のリスナーたちはそれを支持したが、新しいリスナーの少年少女はついていけなかった。

その少年少女が飛びついたのが、音楽的にポップでわかりやすく、見た目も派手でカッコ良く、理屈抜きで楽しめる、グラム・ロックだったのだと思う。言わば最初の、ロックの世代交代であり、原点への回帰だった。これはその後も、新しいロック世代が出てくるたびに、パンクやブリット・ポップといった、原点回帰が繰り返されることになる。

グラム・ロックは1972~73年頃をピークに、少年たちの成長と同じ速さで、あっという間にブームが終息した。そして少年たちは、少しだけ成長すると、次は同世代のパンク・ロックに夢中になったり、自らパンク・ロッカーとなったのだった。

デヴィッド・ボウイなど、本当に才能のあったアーティストたちはその後、グラムから脱皮してさらに新しいスタイルの音楽を展開していったが、多くはグラム・ロックの終焉と共に消えていった、いわゆる「時代の徒花」となった。

しかし、このブログで繰り返し書いているように「ロックがチャラくて徒花でなにが悪い」という基本テーゼに従い、ここではあえて時代の徒花も含めたグラム・ロック・ガイドとして、紹介したいと思う。
ムーヴメントはいつでも玉石混淆。永久不滅の「玉」が聴き継がれるのは当然としても、徒花と消えた「石」を楽しんでみるのもまた、ロックのオツな楽しみ方でもある。

※この記事は2021年1月31日に公開した記事に加筆・修正したものです。

デヴィッド・ボウイ/ジギー・スターダスト
David Bowie – Ziggy Stardust (1972)

まずはグラム・ロックの大黒柱、天才デヴィッド・ボウイの代表曲から。
最初から言ってしまうのもなんだが、ぶっちゃけこの人を除いたら、後はほぼ全部徒花みたいなものだ。ロック界に燦然と輝いた徒花だけれども。
この曲を含んだアルバム『ジギー・スターダスト(The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars)』は、グラム・ロックを超えたロック史上屈指の名盤だ。

「ジギー・スターダスト」の過去記事はこちら

T.レックス/20センチュリー・ボーイ
T. Rex – 20th Century Boy (1973)

ボウイがグラム・ロックの部長なら、副部長はT.レックスだろう。T.レックスもグラム・ロックを盛り上げるのに大いに貢献した。
日本でも圧倒的に少年少女に愛され、演奏技術なんて無くても、キャッチーでカッコいいヒット曲を連発した。やっぱりロックスターというのはこうじゃなきゃね。

「20センチュリー・ボーイ」の過去記事はこちら

スレイド/カモン!!
Slade – Cum On Feel the Noize(1973)

グラム・ロックと言われて見始めるとかなり戸惑う見た目と、古いお笑い芸人のような甲高いツッコミ声のヴォーカルに早速げんなりするが、しかし当時はスレイドは大人気で、グラム・ロックの中心的存在だったのだ。楽曲ももう、これぞグラムの徒花と言える、お祭り騒ぎだ。
全英1位の大ヒット曲で、後にクワイエット・ライオットやオアシスもカバーしている。

「スレイド/カモン!!」の過去記事はこちら

ロキシー・ミュージック/ヴァージニア・プレーン
Roxy Music – Virginia Plain(1972)

ロキシー・ミュージックは本質的には全然グラム・ロックではないのだけれど、最初はグラムの流行の波に乗せらって、グラムのフリをして出て来た感じだった。
ボブ・ディランをポップにしたような歌い方と、ブライアン・イーノのシンセを中心にしたアヴァンギャルドなサウンドの融合が斬新だった。この曲は彼らのデビュー・シングルで、全英4位のヒットとなった。

「ヴァージニア・プレーン」の過去記事はこちら

シルヴァーヘッド/アンダーニース・ザ・ライト
Silverhead – Underneath the Light(1972)

見た目も楽しみたいグラム・ロックなので映像が欲しいところだけど、残念ながらシルヴァーヘッドの映像は無かった。
それも仕方がない。彼らは日本では大人気だったのだけれど、本国イギリスではまったく売れてなかったのだ。今やイギリスでは誰も知らないバンドなのだろう。2012年にはオリジナル・メンバーで再結成ライヴを、日本のみで行っている。
でもこのアルバムは、中身もジャケと同じぐらいカッコいい。せめてわれわれ日本人だけは彼らを忘れないでおこう。

「アンダーニース・ザ・ライト」の過去記事はこちら

ゲイリー・グリッター/ロックン・ロール Pt.2
Gary Glitter – Rock And Roll Part 2(1972)

このクソ野郎も、当時はグラム・ロックの波に乗って大人気だったのだ。このデビュー・シングルは、全英2位、全米7位の大ヒットとなっている。
2019年のアメリカ映画『ジョーカー』で、ジョーカーが覚醒して階段で踊るシーンでこの曲が使われ、物議を醸した。それは当のゲイリー・グリッター本人が刑務所で服役中だったからだ。詳しいことを知りたい方は下の過去記事で。

「ゲイリー・グリッター/ロックンロール Part 2」の過去記事はこちら

モット・ザ・フープル/すべての若き野郎ども
Mott the Hoople – All the Young Dudes(1972)

デヴィッド・ボウイが作詞・作曲、プロデュースを務めた曲で、全英3位とモット・ザ・フープルにとって最大のヒット曲となった、代表曲である。
イアン・ハンターの青春の甘酸っぱさそのものみたいな声と、せつなくとグッとくるメロディがたまらない。

「すべての若き野郎ども」の過去記事はこちら

スウィート/フォックス・オン・ザ・ラン(1975)
Sweet – Fox On The Run

グラム・ロック期にヒットを連発したイギリスのバンドで、この曲は全英2位、全米5位となり、彼らの代表曲となった。グラム・ロック時代も終わった頃にリリースされた曲で、すでにポップでライトな産業ロック風のサウンドに移行しつつある印象だ。ヴォーカルの髪の内巻きが凄い。

ニューヨーク・ドールズ/人格の危機
New York Dolls – Personality Crisis(1973)

米国代表のグラム・バンド、ニューヨーク・ドールズは、ローリング・ストーンズをお手本にしたようなシンプルなロックンロールと、ジョニー・サンダースのギターを中心としたアグレッシヴなサウンドが彼らの魅力だ。
派手な衣装やメイクでの激しいライヴは、デヴィッド・ボウイやルー・リードも絶賛したという。そして数年後に巻き起こるパンク・ロック・ムーヴメントに彼らは多大な影響を与えることになった。

「ニューヨーク・ドールズ/人格の危機」の過去記事はこちら

アリス・クーパー/スクールズ・アウト
Alice Cooper – School’s Out(1972)

そもそもグラム・ロックの元祖は誰なのかという議論には様々な説があるだろうけど、わたしはこのアリス・クーパーではないかと思っている。
1970年には「エイティーン」で十代の若者のリアルな心情を歌い、1971年にはすでにメイクをして演劇的なステージを行っていたのだ。
この曲は全米7位、全英1位となった、アリス・クーパー最大のヒット曲。「学校はもう跡形もなくなった、もう永久に夏休みだ!」と歌い、米英の少年少女たちの熱狂的な支持を得た。

グラム・ロックの名盤を聴くなら、まずはデヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』、そしてT.レックスの『ザ・スライダー』から入るのがお薦め。グラム・ロックとしてはもちろん、どちらもロック史に残る名盤です。

(by goro)