岡林信康/手紙(1970)

わたしを断罪せよ

【放送禁止歌】
作詞:中島一子・岡林信康 作曲:岡林信康

1stアルバム『わたしを断罪せよ』収録曲。最初期の岡林の弾き語りスタイルのフォーク・ソングの中で、わたしが最も好きなのがこの曲だ。

わたしはそれまで、部落差別ということについてほとんど知らなかった。だからこの曲を聴いたとき、「ええっ!?」と思った。「なにそれっ!?」と思った。

そしてその後たまたまだけど、好きになった作家の中上健次が部落を舞台にした小説を書いていたことから、さらに気になり、興味を抱いていろんな本を読み、被差別部落の歴史や、水平社や部落解放同盟のことなどを知った。

この「手紙」という歌は、部落差別の問題を真っ正面から歌った歌で、長いあいだ放送局が自主規制してきた曲だった。

なぜ自主規制するのかは謎だ。部落差別を助長するような内容ならわかるが、この歌はその逆なのだ。放送局なんて、いい加減なものなだ。歌詞に「部落」という単語が出て来ただけで震え上がり「事なかれ主義的ビビり自粛」が発動するのである。

この歌は、被差別部落出身の中島一子という女性の遺書を元に岡林が作詞したという。
被差別部落出身の女性からの手紙という体裁をとった歌詞になっている、将来を約束しながら部落出身ということだけを理由に、身内によって引き裂かれた恋人同士の実話だ。

もしも差別がなかったなら
好きな人とお店が持てた
部落に生まれた そのことの
どこが悪い なにが違う
(作詞:中島一子・岡林信康 作曲:岡林信康)

この魂の叫びが十代の頃のわたしの胸に突き刺さった。
50年前に生まれたこの名曲は、放送自粛措置にもかかわらず、その衝撃的な内容と美しいメロディで多くの人に知られることとなった。部落差別の問題に対する人々の意識に良い影響を与えてきたことは間違いないだろう。

生まれた場所で差別されるなんて本当にくだらないことだ。
しかしこの歌が生まれてから50年が経っても、未だに差別されている地域があり、人々がいると聞く。

差別される側に問題があるのではなくて、差別者はただ人を差別したくて仕方がないだけであり、無知で浅はかで恥じ知らずな虚妄の優越意識に浸っているだけであることを、すべての差別者に1日も早く気付いてほしいものである。

「手紙」の歌詞はこちら