ディランⅡ・西岡恭蔵/プカプカ(1971)

きのうの思い出に別れをつげるんだもの

【ニッポンの名曲】#20
作詞・作曲:象狂象(西岡恭蔵のペンネーム)

60年代末に大阪にあった「ディラン」というフォーク喫茶に集まっていた3人、西岡恭蔵、大塚まさじ、永井洋によってフォークグループ「ザ・ディラン」が結成された。

やがて西岡が抜けて、大塚と永井のデュオとなったのが「ディランⅡ(セカンド)」で、ボブ・ディラン作の「アイ・シャル・ビー・リリースト」を日本語にして歌った「男らしいってわかるかい」でシングルデビューした。
そのシングルのB面だったのがこの「プカプカ」で、元メンバーの西岡恭蔵が書いた曲である。
ディランⅡバージョンの発売から1年後には、西岡恭蔵によるバージョンも発売されている。下の動画はその西岡バージョンのほうだ。

いかにも70年代という時代を象徴する、それまでの日本女性とは違う価値観を持った女性を描いた、ユーモラスでありながら、なぜかせつなく、泣ける名曲だ。

タバコを吸い、ジャズを歌い、自由に男たちと寝る、しかし心の奥ではささやかな幸福に憧れてもいる、自由奔放だけれどもどこか哀しみを背負った女性である。
また、その女性を半ば呆れながらも、そのままの彼女を受け入れ、優しく見守る男性も、それまでの日本の男性像とは違う価値観を持った男性として描かれていると言えるかもしれない。

おれのあん娘はタバコが好きで
いつもプカプカプカ
体に悪いからやめなって言っても
いつもプカプカプカ
遠い空から降ってくるって言う
「幸せ」ってやつがあたいにわかるまで
あたいタバコやめないわ プカプカプカプカプカ
(プカプカ/作詞・作曲:象狂象)

この曲のモデルとなったのはジャズシンガーの安田南という女性だそうだ。作者の西岡恭蔵もそれを認めている。

安田南は、「日本で初めてジャズのスタンダードを歌いこなした歌手」とも評されている。1974年から作家の片岡義男とFMラジオの深夜番組を4年ほど務めていたが、ある日突然無断で番組を休み、そのまま二度と表舞台に戻ることはなかったという。

そして現在は既に亡くなっているとされている。