荒井由実/ルージュの伝言(1975)

ルージュの伝言

【ニッポンの名曲】#38
作詞・作曲:荒井由実 編曲:松任谷正隆

1960年代末から、岡林信康、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげるらを中心に盛り上がりをみせた日本のフォーク・ブームは、70年代中頃から徐々に下火になっていく。そんなフォークの時代を終わらせた大きな要因のひとつには、荒井由実の登場があったからだとわたしは信じて疑わない。

少し音程が不安定で、ビブラートのない、少女のような声。そして、乾いたサウンドと日本人離れしたポップなメロディは、それまでの男臭い四畳半フォークのような単純な曲とは一線を画すものだった。

どちらが優れているということではないけれど、人の耳などというのはやっぱり相対的なもので、耳新しい新鮮な響きについつい反応してしまう。

当時のフォーク系のアーティストたちは、この日本人離れしたポップな音楽を生み出す、見た目もオシャレな女性アーティストの出現に慄然としたのではないだろうか。こりゃ、かなんなあ、と。
実際、吉田拓郎も井上陽水もこの後、荒井由実のような「メロウなサウンド」を模索していく。

荒井由実時代の曲で、わたしがいちばん好きな曲は「ルージュの伝言」だ。

昭和の日本で書かれた歌とは思えないほど、まるで帰国子女が喋る英語のような、ネイティヴのポップ感がすごい曲だ。

歌詞の内容は男の浮気というドロドロの状況なのに「街がディンドン遠ざかっていくわ」「ママから電話で叱ってもらうわ、マイ・ダーリン」と歌う、浮世離れしているというか、昭和50年の日本という現実味がまるで無い、リカちゃんハウスみたいなポップな世界観である。

日本のポップスを創造した初代女王・荒井由実を、わたしは卑弥呼と同じくらい日本の歴史にとって重要な女性だと考えている。。

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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