1960’s
年代別に必聴の究極名盤を10枚ずつ選ぶシリーズの第2弾、1960年代編。
60年代は”ロックンロール”が”ロック”へと進化し、カウンター・カルチャーとして若者たちの支持を得ながら、新たなアートとしても急成長を遂げた。ブリティッシュ・ビートが世界中で鳴り響き、アメリカではフォーク・ロックへとが誕生し、コンセプト・アルバムという概念が生まれて競い合うようにして制作され、革命的なギター奏法はハード・ロックの礎となった。
ロック入門編として、これからクラシック・ロックを聴いてみようという奇特な若者たちの参考にでもなれば幸いです。
あるいは往年のロック好きのジジイやババアには、聴き漏らしていた名盤があれば冥途の土産にこの機会に聴いてみるのも悪くなかろうと思います。
(※以下、リリース順。下線付きの曲名はクリックすると過去記事が読めます)
『ミスター・タンブリン・マン』(1965)
The Byrds “Mr. Tambourine Man”
ザ・バーズの1stアルバムで、“フォーク・ロック”という新たなサウンドを創造した歴史的名盤。ボブ・ディランの原曲を借りてではあるが、ロック・サウンドとシリアスな歌詞を融合させ、アートとしてのロックのステージを一段階も二段階も上げたことでも歴史的な意義が大きい作品だ。
この後バーズは、サイケデリック・ロック、カントリー・ロックなど様々なスタイルを創造し、アメリカのロック・シーンを牽引し、大きな足跡を残していく。
『マイ・ジェネレーション』(1965)
The Who “My Generation”
ザ・フーの1stアルバム。これを上回るカッコいい曲を挙げるのは困難とさえ思える「マイ・ジェネレーション」や、名曲「キッズ・アー・オールライト」を含み、モッズ・バンドらしく、ジェームズ・ブラウンのカバーも2曲収録されている。
とっ散らかった印象もある、決して完成度が高いアルバムではないが、ストリートの熱い感性を持ったイギリスの新しい世代「恐るべき子供たち」の底知れないエネルギーを見せつけるようなアルバムだ。すべてのパンク・ロックの源流がここにある。
『ペット・サウンズ』(1966)
The Beach Boys “Pet Sounds”
「天才と狂気は紙一重」を地で行くブライアン・ウィルソンによって創造された史上初のコンセプト・アルバム。それまでのロックにはなかった異様かつ高度な芸術性を獲得し、ロックはただの流行歌やダンス・ミュージックではもはやなくなり、新しいアートとして認められていく。
このアルバムに衝撃を受けたビートルズやキンクスなど、ブリティッシュ・ビート・バンドが続々とコンセプト・アルバムの傑作を発表し、ロックはより複雑化・アート化していくことになる。
『ブロンド・オン・ブロンド』(1966)
Bob Dylan “Blonde on Blonde”
ボブ・ディランの7枚目のアルバムとなる本作は、カントリーの聖地ナッシュヴィルで録音された。
ロック史上初の2枚組アルバムということでも知られているが、それより重要なのはロックとカントリーという、反体制と保守ぐらい反目し合っていたはずのものをディランが見事に融合させたことだ。ここから”カントリー・ロック”という新たな展開が生まれたと言えるだろう。
アルバム・タイトルはディランが「音が黄金のように輝いているから」という印象から付けられたそうだが、まさにディランの全アルバムの中でも最高のサウンドだ。
『ハートに火をつけて』(1967)
The Doors “The Doors”
ダークな世界観と文学的な歌詞でその名の通りロック・シーンに新たな扉を開いた、ザ・ドアーズの1stアルバム。
当時の何にも似ていないオリジナリティと、1stながらいきなりこの完成度は、どちらも驚嘆するほかない。新しい時代のロックスター像を創造したジム・モリソンの存在感も大きかった。
『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』(1967)
The Velvet Underground “The Velvet Underground and Nico”
内容の物凄さもさることながら、ロック界に「地下フロア」を出現させたという意味でも、同年に発表されたビートルズの『サージェント・ペパーズ』に勝るとも劣らないロック史的意義を持つアルバムだ。わたしはこちらのほうを100倍は聴いたけれども。
もしロックに地下フロアやその影響がなかったら、わたしはロックなんてすぐ飽きちゃったんじゃないかと思うのだ。
『エレクトリック・レディランド』(1968)
The Jimi Hendrix Experience “Electric Ladyland”
突然変異的怪物ギタリスト、ジミ・ヘンドリックスの傑作3rd。
デビューからわずか3年ほどで彼はこの世を去ってしまったが、彼がロック界に与えた影響は計り知れない。彼が存在しなければ、ロックはもっと小ぢんまりとまとまったつまらないものにしかならなかったような気がする。彼のその自由で獰猛なプレイはロックの深淵を覗き込める危険なブラックホールを開いたかのようだった。
この実験的でもあるアルバムのハイライトは「史上最高のカバー」とも評される、ボブ・ディランのカバー「ウォッチタワー」だ。
『ベガーズ・バンケット』(1968)
The Rolling Stones “Beggars Banquet”
アメリカのブルースやR&Bのカバーからスタートし、ブリティッシュ・ビート・バンドの代表格としてアイドル的な人気も博したストーンズがついにたどり着いた孤高の境地。それまでのストーンズとはまったく違う作風で、アメリカ南部の土の匂いを濃厚に感じさせる、ルーツ・ミュージックに回帰した歴史的傑作だ。
ここに至るまでの迷走ぶりからしても、ストーンズはたぶんこのアルバムがなければ終わっていただろう。
ザ・ローリング・ストーンズ【100 グレイテスト・ソングス】の過去記事はこちら
『アビイ・ロード』(1969)
The Beatles “Abbey Road”
ビートルズは「全アルバムが同じくらいの傑作」とわたしは思っているのでどのアルバムを選ぼうか迷ったけれども、ここではジョージとリンゴの曲が光るこのアルバムを選んでみた。
ちなみに「オクトパス・ガーデン」はわたしにとってはビートルズの中でも1・2を争うほど好きな曲なのだ。
『アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡』(1969)
The Kinks “Arthur (Or the Decline and Fall of the British Empire)”
60年代イギリスのコンセプト・アルバム・ブームの中でも、ビートルズの『サージェント・ペパーズ』なんかは特に歴史的名盤に挙げられるけれども、それに勝るとも劣らない名作である。
他のバンドにとってはコンセプト・アルバムなんて一時期の流行で、一作作って「はい、おしまい」だったのだが、キンクスのレイ・デイヴィスは、しつこく70年代半ばに至るまで何作もコンセプト・アルバムを作り続けた。そのほとんどはまったく売れなかったが、しかしそのほとんどが傑作である。
以上、1960年代の【必聴名盤10選】でした。
われながら完璧なチョイスで惚れ惚れするほどだ。わたしが死んだら棺桶に花の代わりにこの10枚のアルバムを一緒に詰め込んでほしいぐらいだ。できればCDでなく、LP盤で。
次回はハード・ロックやらプログレやらパンクやらで大賑わいのロック黄金時代、70年代の必聴名盤10選です。乞うご期待。(goro)